facebook・mixiの限界の始まり?

先週末(9/10)のmixi meet-up2010からの感想を、先日刊行されたモバイルSNS/ソーシャルアプリの事業分析と市場規模予測の宣伝を兼ね、facebookとの競争を意識しながらまとめておきたい。


1. mixiの水平分業戦略が明確に〜仮想敵はfacebookに〜
mixiが自らを「ソーシャルグラフプロバイダー」と位置づけ、ヤフージャパン・楽天・モバゲー・Zynga等幅広いサードパーティー(SAP)のコミュニケーションをmixi Graph APImixi Plug-inを通じ支援する、SAPとの水平分業戦略が明確になった。
これはかつてのMicrosfoft(ブラウザ)やGoogle(検索)のように、ソーシャルコミュニケーションでネット上のトラフィックの根元を押さえるOS的な機能を狙う、facebook型の戦略である。
mixifacebookを仮想敵と想定し、ガチンコ勝負に出る構図が明確になったとも言える。


2. facebook/mixiは市場の支配者か?単なる土管か?

ではこれからの本格的なソーシャル時代において、mixiあるいはfacebookにインターネット業界の競争軸は収斂していくのだろうか。
私自身は、検索からソーシャル時代への世代交代は起きることを前提としても、mixifacebookが支配者となるシナリオには懐疑的である。mixifacebookの立ち位置は「NTT」(ネット企業から見れば土管)に近く、「NTTドコモ」(かつては、モバイルCPからみて市場の創造主)にまでは影響力が達していないと言うイメージである。
facebookの場合でさえ、ソーシャルゲームで言えばZynga、リアルタイムコミュニケーションではTwitter等の、facebookからみれば「アプリ」である各社の存在感が既に日に日に増している。
特に今回のmixiの座組みで言えば、力関係の逆転構造は最初から鮮明であり、モバゲーをはじめ、ヤフーや楽天等の相対的な力は非常に大きい。
もちろん、連携機能を通じてfacebookもしくはmixiに個人のログが今後加速度的に集積されていく、つまりストックとしてのソーシャルグラフfacebookもしくはmixiに集中することは決して否定しない。
しかし、その実際の利活用、すなわち会員間のコミュニケーション・インタラクションそしてトランズアクション(マネーフロー)を生み出す主導権は、今既にSAPが握りつつある。今後リアルタイム・ロケーションベース等、TPOに応じたコミュニケーションが本格化する中で、ソーシャルグラフ運用の主導権がますますSAP側に移る「軒先を貸して母屋を取られる」になると考えるのが(世界的に見ても)自然ではないか。


3. mixiの岐路〜「背伸び」のBtoBプラットフォーマー戦略は、現実の変化に間に合うか?

mixiのポジションは重大な岐路にあるように思う。mixiは日本でまだアクティブユーザー1500万規模で、米国のfacebookのような全ユーザー参加に近い圧倒的地位をまだ得ていない。
NTTドコモにせよGoogleにせよ、その技術やインフラが圧倒的な力を持ちえたのは、彼らがエンドユーザーをまず押さえ、かつ技術・インフラのロードマップを展開し、その利活用で終始主導権を握るという2条件を同時にクリアした結果であると思う。(ドコモであれば夏野さんのロードマップどおりに端末と新サービスが生まれ、Googleは検索技術から検索連動広告配信というキャッシュ創出マシンを展開した)
mixiが、SAPを儲けさせmixiの集客力とロードマップに従うしかないと思わせるには残念ながらまだまだ力不足のように思う。日本発のソーシャル・プラットフォームに期待するところ大なだけに、もう一段の非連続的な仕掛けが待ち望まれる。